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認知症で娘のことをわすれていくおばあちゃん。
彼⼥を⾒つめながら今までのことをしっかりと⼼の中に刻み込む娘、
そして、その⼆⼈の思い出を聞きながら想いを馳せる孫娘…。
中央公論⽂芸賞を受賞した『家族じまい』の
登場⼈物が織りなすもう⼀つの物語です。

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⽣まれ、育ち、そして様々な出会いを経て、やがて⽼いていくこと、
そのすべてが”たいせつなじゅんばん”だということがこの作品に描かれています。
おんなのこがおんなのひとになり、しあわせの階段を上がる時も、
⽼いていろんなことを忘れていく時も、
すべてがかけがえのないものだというメッセージが⼼に響きます。

⺟から娘へ、娘から⺟へ。プレゼントしたくなる絵本です。

※画像クリックで拡⼤します。

あらすじ

最近とても忘れん坊のさとちゃんは、娘の名前も忘れてしまう。忘れられた娘は⾃分の娘とさとちゃんのことを話し合う。さとちゃんに育てられてきた思い出。さとちゃんに忘れられた今の気持ち。さとちゃんとのさよならの準備をするこれから。そして、それは⺟から娘へ繋がっていくたいせつなじゅんばんだった。

推薦文

広末涼子さん
「(さよならの準備も覚悟も、わたしはまだできていない。だけど)“たいせつなじゅんばん“を、わたしも⺟からうけとり、娘へとわたす⽇が、いつか必ず訪れる」―広末涼⼦さん(⼥優)

桜⽊紫乃先⽣からの
作品に込めたメッセージ

⺟が、わたしの名前を忘れていることに気づいたとき、
実はあまり悲しくなかったんです。
ああそうか、とうとうきたか、という感じでした。
不思議なほど、感情は揺れませんでした。
思ったのは、ふたりが⺟と娘として半世紀かかって描いてきた絵に、
ちゃんと余⽩が⽣まれて、完成が近づいてきたということでした。

この先、どんどんわたしを忘れてゆく⺟のことを考えながら、
「家族じまい」という⼩説を書きました。
絵本「いつかあなたをわすれても」は、
⼩説からは漏れた、孫の視点で書いてみました。
不要な⾔葉を取り払ってゆく作業のなかで、
わたし⾃⾝が娘になったり孫になったり、
いつか迎える⽼いた時間を眺めたり、
ひとつ、⼥に⽣まれたことの答えを探す、
よい時間を過ごせたと思います。

紡いだ⾔葉に命を吹き込んでくださったのは、
オザワミカさんでした。
視界いっぱいに、赦(ゆる)しがある⼀冊にしてくださって、
本当にありがとうございます。

「おかあさん、わたしをわすれていいよ。
わすれたほうが、さびしくないから。
わすれたほうが、こわくないから」

この⾔葉を、気持ちを、⺟に⼿渡したい。
その気持ちが、絵本というかたちになりました。

桜⽊紫乃

桜⽊紫乃先⽣

写真/原⽥直樹

桜⽊紫乃プロフィール
北海道⽣まれ。2002年「雪⾍」で第82回オール讀物新⼈賞を受賞。2007年、同作を収録した『⽔平線』で単⾏本デビュー。2013年『ラブレス』で第19回島清恋愛⽂学賞、『ホテルローヤル』で第149回直⽊三⼗五賞を受賞。近年の著書は『緋の河』、『家族じまい』(第15回中央公論⽂芸賞受賞)、『ブルース』(コミカライズは共著・もんでんあきこ)、初エッセイ集『おばんでございます』、『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』など。

オザワミカさんからの
メッセージ

桜⽊紫乃さんが「おかあさん、わたしをわすれていいよ」
というメッセージを込めた絵本を作りたいとおっしゃっていて、
その絵を担当してもらえませんかとお声がけいただいたとき、
わたしなんかでいいのだろうか︖と思いましたが、
そのメッセージを伝えるお⼿伝いがしたい気持ちが⼤きく上回りました。
お引き受けするときに、これは⾃分⾃⾝と向き合う作業になっていくな、と
お腹の底のほうが、きゅうっとなりました。桜⽊さんの、いろいろなものを⼿放した、
強くて優しいメッセージを表現できたと思っています。

たくさんの⽅の⼼に届きますように。

オザワミカ

オザワミカさん

オザワミカプロフィール
愛知県出⾝。イラストレーター。書籍や雑誌のイラストや演劇の宣伝美術を主に⼿がける。2010年の漫画家・江⼝寿史⽒との2⼈展「reply」など展⽰活動多数。2019年リボーンアートフェスティバル⻘⽊俊直展ディレクター。フリーブックレット『BOOKMARK』イラストデザイン担当。

絵本『いつかあなたをわすれても』の
もう⼀つの物語

家族じまい

第15回中央公論⽂芸賞受賞作
家族じまい[集英社⽂芸単⾏本]

認知症の⺟と齢を重ねても横暴な⽗。両親の⽼いに姉妹は⼾惑い、それぞれ夫との仲も揺れて…。別れの⼿前にあるかすかな光を描く⻑編⼩説。
1,600円(本体)+税
ISBN 978-4-08-771714-3