赤おに対談
おにをめぐる冒険 その2
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「子ざるのかげぼうし」作画雑記

作家プロフィール

  ―― 詩人、nakabanさんは、ますます詩人っぷりが炸裂!
やっぱり物語というか、言葉に助けられたっていうのがすごくありますよね。
ストーリーと絵のマッチングっていうか、しっくりくる感じって今まで多くの『ないた赤おに』が出版されていますが、この本ががいちばんって思ってます(笑)。
それはすごいなあ!
もともと文章だけで完結している物語だから、ダブってはいけないというか。
なぞってはいけないっていうか。
だけどその字に力をあげるというか、絵で、足し算じゃなくて、掛け算になるように、と言う風に考えて。
だから、なんども書き直しました(笑)。
本当にすいません、本当にありがとうございました。
だけど絵本って難しいですよね。
これぐらい苦労しないとできないなって思いました。
でもやっぱりテキストがある絵本をやってみたかったからいい経験になりました。
これも色鉛筆?
いろいろなバリエーションのなかには絵の具で描いていたのもあるんですが。
色鉛筆のなかに混ぜちゃうと違和感があるんですよ。
だから全部色鉛筆にしました。
それがかわいい。
ちょっと難しいたとえなんですけど、アイスクリームって空気が中に入っているからおいしいっていうじゃないですか。
色鉛筆のざらざら感ってそれと同じような感じがしましたね。
色鉛筆というのはnakabanさんの中でまったく新しい画材なんですか。
そうですね。
で、けっこう気に入ったんでしょ?
(笑)
  ―― ここで、再び表紙を見入る一同。
実は表紙絵候補は最終的には2点あって、
ひとつは実際に選ばれたグレイ地のもの、
もうひとつはバックが鮮やかなブルーのもの。
そのことに話が及びます。
表紙はこれが最高だと思う。
僕の中では地味なんだけど。
色数でいえばね。
やっぱり客観的に見れてなかったんですね。
精一杯客観的にみようとして、やっとこれって感じ。
ふーん(笑)。
僕も自分の中で迷ったんですよ。
もっとたくさん作ってたんですよね、本当は。
本屋さんでのインパクトかなあとも思ったし。
いや、やっぱりずっとお部屋に置いといてうるさくないほうかなあと思ったし。
こっちでよかったと思います。
だからもし本屋さんでこの本を見る人がいたら表紙だけでなく中もぱらっと見てほしいよね。
中がすごくきれいだから。
もちろんそう。
でも絶対手に取りたくなると思うけどね。
表紙も中の絵も、懐かしい感じなんだけど、無国籍だし、時代が特定できない感じがうまく出ていると思います。
そうそう、最初本当に和風の日本の世界にしようかそれとも、無国籍のどこかの国にするかっていう。
どういう舞台設定にしようかって悩みましたよね。
そうそう、ユトレヒト(江口さん主宰の代官山のブックショップです)に来てくれて、直球昔の絵本を2人でいっぱい見て、この世界感出す?みたいな。
それを今わざわざやる?のかなっていろいろ考えたよね。
でも昔のものって時代を超えてずっと読まれているものだから力はすごくあるんだよね。
やっぱりいいよね、みたいになっちゃう。
だからこれかなって、言ってるときもあったよね、最初のころ。
でもこれをわざわざ今、しかもnakabanさんがやる必要もないのかもっていうところで、さんざん悩んで。
創作童話ではなく昔話って思っている人が多くて…それをまた昔話的な絵柄にしちゃうと新しく出す意味ってどこにあるのかなって思ってました。
クラシックな佇まいと正反対のものが同居するっていうのが、いい感じでできましたよね。
無国籍にしようとか、西洋風にしようとか、和風にしようとか、もう一切考えないようにしようしたんですよ。
今ここにいる自分が描いてできたものがいちばん正直だから。
同じ時代の人たちに向けて発信するわけだから。
だから何年も経って、これを見た人がちょっと古臭い表現だなって思えばそれはそれで素敵なことだと思います。
なるほどね、そうかもしんない。
消費されていく感じがないからいいですよね、絵本って。
読み捨てられるのと対極にある本だから絵本って。
そうそう。
浜田廣介さんの文章みたときにこれはコマーシャリズムと対極にあるなって思ったんですよ。
対極のものが来たなって思って。
これはやるべきだなって思いましたよ。
ホントだよね。
今ってその絵本の持つ夢の世界を売り物にしちゃってる世の中だから、そうじゃない絵本との関わり方をしたいんですよ。
ひろすけ童話って教科書とかで触れたりしませんでした?
読むと思い出すんだけど、でもどこで触れたかな?
そのくらいもうベースにあるっていう。
記憶あるよね。
だから昔話とかと間違えるってのもわかるよね。
やさしさとか善意とか、最終的にはそれがいいんだって。
善意でなにが悪い!みたいな。
一時期そういうものが排除された時代というのがあったじゃないですか。
でも逆に今はそれが求められているっていうか、そういうものを読みたいっていうか。
たしかにかなりストレート。
小津の映画見て、ああ、いいなって思う、それに通じるものがあるよね。
淡々とお互い思いやる。
お互いいい人で、すれ違ったりするけどでもどっちもが思いあってっていう。
今の日本の作家さんにこういうの書いてっていっても書けないかもしれない。
うーん、そうだよね。
書けといわれれば、書くだろうけどうーん、書けない、書けないでしょう、これは。
禁じ手でしょうという。
そういう意味ではやっぱりすごいよね。
   
《完》
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「集英社 ひろすけ童話絵本」原画展
おにをめぐる冒険 その2 ひろすけ童話絵本 おにをめぐる冒険 その1