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広い野原のまんなかの大きな栗の木のほらに、とうさん鳥と住んでいる、むく鳥のこどもがいました。
こどもはおとうさん鳥に「おかあさんはいつ帰ってくるの?」と尋ねます。
おとうさん鳥はこどもの鳥に「おかあさんはとおいところに行っているんだよ」、そう言っていたからです。
けれども幾日待ってもおかあさん鳥は帰ってきません。
野原がすすきの穂に覆われても、やがて一面の雪に覆われても、おかあさん鳥は帰ってきませんでした。
ほらの入口に一枚残った栗の葉。
こどもの鳥には、かさこそ鳴るその枯れ葉がおかあさんのように思えました。
北風に吹かれたその葉を、馬の尾の毛でしっかりと枝につけてやり、雪を払ってようやくこどもの鳥は安心するのでした。
―― 抑えた哀しみが静かに伝わってくる優しい作品です。
むく鳥の胸の綿毛、すすきの穂、綿雪など、物語全体に流れるふんわりとしたイメージを、画家網中いづるさんの柔らかいタッチで表現。
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